e-Taxの開業届をMacから出す|経路の確かめ方と代わりの手順

e-Taxで開業届を出そうとして、Macで手が止まる人は少なくありません。画面の操作を間違えているわけではなく、案内されている経路そのものがMacに向いていないからです。結論を先に書くと、開業届をe-Taxから電子的に出す方法として国税庁が示しているのはe-Taxソフトを使う形で、そのe-TaxソフトはMacでは利用できません。ただし書面で出す道と、青色申告承認申請だけを電子で出す道は残っています。どこで分かれるのかを、順に並べます。

開業届の提出方法として案内されているのは何か

個人事業の開業・廃業等届出書は、新たに事業を開始したとき、事業用の事務所や事業所を新設、増設、移転、廃止したとき、事業を廃止したときに出す届出です。手続根拠は所得税法第229条で、対象になるのは新たに事業所得、不動産所得、山林所得を生ずべき事業の開始などをした人です。提出先は納税地を所轄する税務署長になります。

国税庁の手続案内では、作成と提出の方法が次のように示されています。

パソコンからe-Taxソフトで届出書を作成の上、e-Taxにより提出してください。 出典: nta.go.jp

そのうえで、書面で届出書を作成して持参または送付により提出することもできる、という注記が続きます。つまり電子で出す経路はe-Taxソフト、書面で出す経路は持参と送付、の2本立てです。添付書類については、e-Taxにより提出する場合は本人確認書類の提示や写しの添付が不要と案内されています。書面でマイナンバーを記載した申請書などを出す場合は、その都度、本人確認書類の提示か写しの添付が求められます。

提出時期についても記載があります。事業の開始等の事実があった日の属する年分の確定申告期限までに提出してください、という書き方です。期限が土曜日、日曜日、祝日などに当たる場合は、その翌日が期限になります。

e-Taxソフトの推奨環境に、Macは入っていない

問題はここからです。いま引用した案内に出てくるe-Taxソフトは、パソコンに導入して使うダウンロード版を指します。e-Taxソフトのダウンロードコーナーで示されている推奨環境は、OSがMicrosoft Windows 11、ブラウザがMicrosoft Edge(Chromium)とGoogle Chrome、PDF閲覧がAdobe Acrobat Reader DCです。そして表の下にはっきり書かれています。

Mac OS をご利用の方は、e-Taxソフトをご利用いただけません。 出典: e-tax.nta.go.jp

配布されている共通プログラムのインストーラは拡張子がexeの形式で、容量は約89.8MBです。Macではダブルクリックしても開きません。導入の前段にあるルート証明書と中間証明書のインストーラ、信頼済みサイト登録ツールも、いずれもexe形式で配布されています。手順の最初から最後までWindowsを前提にした作りです。

「操作を間違えているのではないか」と自分の手順を疑って何時間も探すことになりやすいのは、この構造が案内の別のページに書かれているからです。開業届の手続案内を読んだ時点では、e-Taxソフトが何を指すのかも、それがMacで使えないことも書かれていません。

WEB版の一覧に開業届は無い。青色申告承認申請はある

Macで使えるのは、ブラウザから使うe-Taxソフト(WEB版)です。ではWEB版で開業届を作れるのか、というのが次の疑問になります。作成可能な手続きは一覧として公開されており、パソコンから使う場合とスマートフォンから使う場合で別々に整理されています。

パソコン向けの一覧に並んでいるのは、納税関係、納税証明書交付関係、法定調書関係、源泉所得税関係、所得税と消費税の関係、申告書等閲覧申請関係、インボイス制度関係、金融機関等の源泉所得税に関する手続、租税条約等に関する手続などです。所得税と消費税の関係の中には、所得税の青色申告承認申請、消費税課税事業者選択届出、消費税簡易課税制度選択届出、消費税課税期間特例選択・変更届出が入っています。

この一覧に、個人事業の開業・廃業等届出書は見当たりません。スマートフォン向けの一覧にもありません。つまり開業届については、Macで使える経路の中に電子提出の入口が用意されていない、という読み方になります。

一方で青色申告承認申請は一覧に入っています。これは実務上かなり大きい違いです。開業届と青色申告承認申請はセットで出すものと思われがちですが、別々の手続きで、期限も根拠も違います。Macしか持っていない場合、青色申告承認申請だけを先に電子で出し、開業届は書面で出す、という分け方ができます。

なお、e-Taxを初めて使う場合は、先に電子申告・納税等開始届出書を出して利用者識別番号を取得する必要があります。この開始届出書はオンラインで送信できるため、ここはMacで進められます。

Macだけで進める場合の選び方

行き止まりが分かったところで、現実的な選択肢は4つに整理できます。

  • 書面で出す。手続案内のページから個人事業の開業・廃業等届出書のPDFと記載要領のPDFを取得できます。様式は728KB、記載要領は82KBです。PDFは適宜の作業場所にダウンロードすれば入力と印刷ができると案内されており、その場で開いて入力すると内容が保存できない場合があるという注意も添えられています。印刷して納税地を所轄する税務署へ持参するか、送付します。税務署の開庁時間は8時30分から17時までで、閉庁日は時間外収受箱への投函でも提出できます。
  • Windowsのパソコンを借りて、e-Taxソフトから出す。家族や職場の端末を一度だけ使う形です。利用者識別番号と電子証明書の準備はMac側で済ませておけます。
  • 会計の業務用ツールや開業手続きのサービスを使う。画面の案内に沿って入力すると書類が整い、そのまま電子で送信できるものもあります。ただし提供元ごとに対応している手続きが違うため、開業届が対象に入っているかを先に確かめる必要があります。
  • 税理士に依頼する。開業後の記帳や申告まで見てもらう前提であれば、最初の届出をまとめて任せる形です。

3つめについては、抵抗を感じる人もいます。

まずは会計ソフトに縛られず、自力で確定申告をやってみたいという思いがありました。また、「開業届のためだけに、今後の継続的な営業連絡を受けるのは避けたい」と感じたためです。 出典: msfr-system.com

どれを選ぶかは、開業届を出したあとに何を続けるかで決まります。記帳を自分でやるつもりなら書面が最も身軽です。開業直後から請求書の発行や経費の管理まで機械に任せるつもりなら、そのツールの中で完結させるほうが手戻りがありません。

出す前に決めておく3つのこと

書面でも電子でも、届出書に書く内容は同じです。先に決めておくと迷わないのが3つあります。

ひとつめが納税地です。自宅を納税地にするのか、事務所や事業所の所在地にするのかで、提出先の税務署が変わります。事務所や事業所を移転する場合で、移転前の所在地を納税地としていたときは、移転前の所在地を所轄する税務署長に提出する、という決まりも案内されています。なお、新設や移転に係る事務所の所在地が納税地と異なる場合でも、納税地を所轄する税務署長以外への提出は不要です。

ふたつめが屋号です。空欄でも受理されますが、屋号で銀行口座を作る予定があるなら、届出書の記載と口座名義をそろえておくほうが後の手続きが通りやすくなります。

みっつめが事業の概要です。何をどのように提供して収入を得るのかを、具体的に書きます。フリーランスの場合、ここが曖昧だと、あとで経費の判断に迷う場面が出てきます。設計、撮影、執筆、翻訳のように仕事の中身が分かる言葉で書いておくと、後から自分で読み返したときにも基準になります。

あわせて確かめておきたいのが、開業日の決め方です。届出書に書く開業日は、事業の開始等の事実があった日を指します。準備を始めた日と、最初の売上が立った日と、契約を交わした日が別々のことは珍しくありません。どの日を開業日にするかで、その年に経費として扱える範囲の考え方が変わります。迷った時点で税務署か税理士に確認しておくほうが、あとから直すより早く済みます。

廃業のときに合わせて出すものもあります。青色申告を取りやめる場合は青色申告の取りやめ届出書を、消費税の課税事業者などで課税売上に当たる他の所得がない場合は事業廃止届出書を、それぞれ出すよう案内されています。

開業のあとに毎日開く画面を、先に整えておく

届出を出すのは一度きりですが、そのあとに毎日開く画面が増えます。会計の業務用ツール、請求書を発行する画面、銀行とクレジットカードの明細、案件のやり取りをするサービス、確定申告の時期には作成コーナー。これを1つのブラウザのタブに並べると、開業から数か月で目的の画面を探す時間が毎日かかるようになります。

Macの標準機能でも独立した窓は作れます。SafariではmacOS Sonoma 14以降であれば、開いた状態でメニューバーの「ファイル」から「Dockに追加」を選びます。Chromeでは、右上のその他アイコンからページをアプリとしてインストールの項目を選びます。効いてくるのは、作った窓のログイン状態の扱いです。

Webアプリは、Safariとは別に機能します。閲覧履歴、Cookie、Webサイトデータ、設定情報はSafariと共有されません。そのため、Safariプロファイルを使う場合と同様に、ブラウズをほかとは切り分けることができます。 出典: support.apple.com

会社員を続けながら事業を始める場合、この分離がそのまま効きます。勤務先のアカウントと事業のアカウントを1つのブラウザで切り替えていると、共有のリンクを開いた瞬間に取り違えが起きます。窓を分けておけば、そもそも混ざりません。

作り方をそろえたい場合は、URLとアイコンを指定して独立した.appを作る専用の道具を使う経路があります。Safariの「Dockに追加」はmacOS Sonoma 14以降が前提で、ChromeのPWAはサイトによって項目そのものが出てこないため、作るたびに手順が変わります。300以上のプリセットから選ぶだけでアプリにできる作りであれば、URLの入力もアイコンの用意も要りません。どこまで作れるかはできることに整理されており、作る流れは使い方ガイドにあります。

選ぶときに見る点は3つです。アプリごとにログイン状態を分けられるか、ブラウザが更新されたあとも作った.appがそのまま動くか、窓の大きさと位置を覚えてくれるか。登録済みのサービスは対応サービス一覧で確認でき、無料で作れる範囲は料金に、細かい挙動の違いはよくある質問に書かれています。

進め方としては、開業届は書面で出すと決めて先に片づけ、利用者識別番号の取得と青色申告承認申請はMacから電子で済ませ、そのうえで日々使う画面を独立させるのが手数の少ない順番です。行き止まりを回り込む時間を、事業そのものに回せます。

よくある質問

開業届はMacからe-Taxで出せますか?

国税庁の手続案内では、電子で出す方法としてパソコンからe-Taxソフトで作成して提出する形が示されています。そのe-Taxソフトの推奨環境はMicrosoft Windows 11で、ダウンロードコーナーには「Mac OS をご利用の方は、e-Taxソフトをご利用いただけません」と明記されています。Macで使えるWEB版の作成可能手続きの一覧にも、開業届はありません。

青色申告承認申請もMacでは出せませんか?

こちらは出せます。e-Taxソフト(WEB版)で作成可能な手続きの一覧に、所得税の青色申告承認申請が入っています。開業届と青色申告承認申請は別の手続きなので、開業届は書面で出し、青色申告承認申請はMacから電子で出す、という分け方ができます。

書面で出す場合、どこから様式を入手しますか?

国税庁の手続案内のページに、個人事業の開業・廃業等届出書のPDFと記載要領のPDFが用意されています。様式は728KB、記載要領は82KBです。PDFは作業場所にダウンロードしてから入力と印刷ができると案内されており、ダウンロードせずに開くと入力内容が保存できない場合があると注意が添えられています。

開業届の提出期限はいつまでですか?

国税庁の手続案内には、事業の開始等の事実があった日の属する年分の確定申告期限までに提出してください、と記載されています。期限が土曜日、日曜日、祝日などに当たる場合は、その翌日が期限になります。提出先は納税地を所轄する税務署長です。

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