PCでコード譜を作成する|無料の選択肢と窓の分け方
コード譜をPCで作りたいと調べ始めると、出てくる名前の数に対して、判断の材料が足りないことに気づきます。無料のものも有料のものも並んでいますが、どれがブラウザの中で動き、どれをMacに入れることになるのかがはっきりしません。この2つは使い勝手が根本から違います。この記事は、PCでコード譜を作る道を3つの系統に分け、無料で始められる範囲の線引きを示し、そのうえでブラウザで作る場合に画面をどこに置くべきかまでを順に扱います。
PCでコード譜を作る道は3系統に分かれる
名前を並べる前に、系統で分けたほうが早く決まります。
| 系統 | 代表的なもの | 動く場所 | 費用の形 |
|---|---|---|---|
| 楽譜作成ソフト | MuseScore Studio、Finale系 | Macに入れる | 無料または買い切り |
| タブ譜向けのソフト | Guitar Pro、TuxGuitar | Macに入れる | 有料または無料 |
| ブラウザで動くサービス | Flat、オンラインの楽譜エディター | ブラウザの中 | 無料の枠があり上位は有料 |
この分け方が効いてくるのは、あとで「開くまでの手間」を減らす段です。Macに入れるものは、最初から独立したアプリなのでDockに並びます。ブラウザで動くものは、何もしなければブラウザのタブの1枚として埋もれます。同じ「コード譜を作る」作業でも、入口の作り方が変わるということです。
どの系統を選ぶかは、作りたいものの形で決まります。コードネームだけを並べた弾き語り用の譜面なのか、5線譜にコードネームを添えた譜面なのか、タブ譜まで含めたバンドスコアなのか。この3つは必要な機能が違い、同じソフトで全部やろうとすると遠回りになります。
無料で始められるものと、その線引き
無料と書かれているものにも、それぞれ別の線が引かれています。3つを具体的に見ておきます。
MuseScore Studioは、GNU GPLで公開されているオープンソースの楽譜作成ソフトです。MuseScoreのダウンロードページには最新の安定版として4.7.5が並び、Windows版とMac版、Linux向けのAppImageが用意されています。付属のMuseHubを使う場合はmacOS 12以上が必要と書かれており、MuseHubを使わずに本体だけを入れる選択肢も同じページにあります。費用の面での制限はなく、5線譜にコードネームを載せる作り方が素直にできます。タブ譜も扱えます。
タブ譜も取り扱うこともできますが、オーケストラのスコアを作成できるなどギターを専門とするGuitar Proとは一線を画するソフトです。Finaleに近い感じでしょうか。 出典: iehohs.com
TuxGuitarは、タブ譜に寄った無料のエディターです。TuxGuitarの公式サイトではLinux、Windows、macOS、FreeBSD、Android向けの導入用パッケージが配布され、ライセンスはGNU Lesser General Public Licenseです。Guitar Pro、Power Tab Editor、TablEditのファイルとMIDIを開ける点が実務では効きます。ただしMacで使う前に知っておくべき条件が1つあります。配布されているパッケージは正式な署名がされていないため、導入時にmacOSの署名の検証を一時的に切る操作が必要だと、公式サイト自身が注意書きとして書いています。手元のMacの設定を触ることになるので、無料であることと手間が無いことは別だと考えておくほうが安全です。
ブラウザで動くものの代表がFlatです。無料の枠の線は明確で、保存できる楽譜は15件まで、使える楽器は30まで、書き出しと印刷にはサービスのロゴが入ります。リアルタイムの共同編集、MIDI入力、MusicXMLとMIDIの読み込みは無料の枠に含まれています。MacとWindowsに対応したデスクトップ版も無料で配布されるようになったので、ブラウザで使うかアプリで使うかを選べる形です。正確な範囲はFlatの料金ページに列で並んでいます。
おすすめは用途で変わる
「おすすめ」を1つに絞れないのは、作る譜面の形が人によって違うからです。4つの用途で分けると迷わなくなります。
- コードネームだけを並べた弾き語り用の譜面を、印刷して使いたい。5線譜の機能はほとんど要らないので、MuseScore Studioか、ブラウザで動くエディターの無料の枠で足ります
- 5線譜にメロディとコードネームを載せて、人に渡したい。楽譜作成ソフトの系統が向きます。MusicXMLで受け渡しできる形にしておくと、相手のソフトが違っても開けます
- タブ譜を含むバンドスコアを作りたい。タブ譜向けのソフトの系統になります。無料で始めるならTuxGuitar、仕上がりと操作性を優先するなら有料のものが候補です
- 複数人で同時に触りたい、または譜面をリンクで共有したい。ブラウザで動くサービスの系統がここだけは明確に強く、ほかの系統では代わりになりません
判断の順番としては、共同編集と共有が要るかどうかを先に決めるのが早いです。ここが要るならブラウザで動くサービスに寄り、要らないならMacに入れる系統で足ります。印刷の仕上がりを重く見る場合も、楽譜作成ソフトの系統が有利です。
もう1つ、コードネームの書き方そのものにも流派があります。鳴っている和音をどこまで譜面に書くか、テンションやaddを省略するかは、作る人が決めるルールです。人に渡す譜面なら、最初にそのルールを決めて全曲で統一しておくほうが、あとから直す手間が出ません。
ブラウザで作るときに実際に詰まる3点
ブラウザで動くサービスを選んだ場合、機能ではなく置き場所が原因の詰まりが3つ出てきます。
1つ目は、埋もれることです。譜面を書く作業は1回が数十分から数時間続きます。その間、同じブラウザには調べ物のタブ、音源を聞くための配信サイトのタブ、連絡用のタブが増えていきます。譜面のタブは20枚の中の1枚になり、戻ってくるたびに探すことになります。
2つ目は、閉じてしまうことです。ブラウザのウィンドウを閉じる操作は、譜面のタブも一緒に閉じます。自動保存があるサービスなら失われはしませんが、書いていた位置と再生の状態は戻りません。
3つ目は、ログインが混ざることです。教える側と教わる側で別のアカウントを使う、学校や教室のアカウントと個人のアカウントを使い分ける。こうした場面では、同じブラウザの中で入れ替えるたびにサインアウトとサインインが要ります。
この3つは、どれもサービス側の機能では解決しません。画面をどこに置くかで決まる問題です。
画面を独立した窓に移す2つの道
Macで手数がいちばん少ないのは、macOSに含まれている機能です。Appleのサポートページには次のように書かれています。
Webアプリがホームフォルダの「アプリケーション」フォルダに保存され、DockやSpotlightからも開けるようになります。 出典: support.apple.com
Safariで譜面のページを開き、メニューバーの「ファイル」から「Dockに追加」を選ぶだけです。macOS Sonoma 14以降が必要で、追加の費用はかかりません。同じページには、Webアプリが閲覧履歴、Cookie、Webサイトデータ、設定情報をSafariと共有しないこと、名前とアイコンを変えられること、削除はホームフォルダの「アプリケーション」フォルダから行うことも書かれています。
もう1つは、Chromiumのエンジンで窓を作る道です。この道を選ぶ理由は3つあります。1つ目は、譜面のサービスがChromeでの動作を前提に作られている場合に、そのままのエンジンで動かせること。2つ目は、窓ごとにログイン状態を分けられるので、教室用と個人用のアカウントを同時に開いたままにできること。3つ目は、Chromeウェブストアの拡張機能をそのまま使えることです。この種の道具でできることの範囲はできることにまとめられており、作る手順は使い方ガイドが順を追って説明しています。
譜面を書く作業では、もう1点効いてきます。タブバーとアドレスバーを消した窓にすると、画面の縦方向がその分だけ広くなります。5線譜を縦に並べて見る作業では、この差が実際の作業量に出ます。
キーボードの取り合いを減らす
譜面の入力は、マウスよりキーボードのほうが速くなる作業です。音の長さ、休符、オクターブ、コードネームの入力は、どのサービスもキーで割り当てを持っています。
ここでブラウザのタブは不利になります。ブラウザ自身が持っているキーの割り当てと、譜面のエディターが使いたい割り当てが衝突するためです。窓を分けても、macOSとブラウザが押さえているキーが消えるわけではありませんが、タブの切り替えや新しいタブを開く操作が混ざらなくなる分、誤操作は減ります。
実務として効くのは、次の2つを最初に確かめておくことです。1つは、終了の確認です。⌘Qで確認のダイアログを出す設定にできる道具なら、譜面を書く窓ではそれを有効にしておきます。もう1つは、タブの復元です。前回開いていた場所に戻る設定があれば、作業の再開が1手で済みます。費用の考え方は料金に出ています。
作った譜面がどこに残るかを先に決める
系統を選ぶときに後回しにされやすく、あとで困るのが保存先です。Macに入れるソフトで作った譜面は、手元のファイルとして残ります。ブラウザで動くサービスで作った譜面は、サービス側のアカウントの中に残ります。この違いは、無料の枠の線引きと直接つながっています。
ブラウザで動くサービスの無料の枠には、保存できる件数の上限が置かれていることがあります。Flatの無料の枠が15件までであるように、曲が増えた時点で、古いものを消すか有料の枠へ進むかの判断が要ります。手元にファイルとして残していれば、この判断は「アカウントから消して手元に残す」という形で片が付きます。
そのために効くのがMusicXMLでの書き出しです。楽譜作成ソフトとブラウザで動くサービスの多くが読み書きに対応している形式なので、作った譜面を系統をまたいで持ち運べます。ブラウザで動くサービスを主に使う場合でも、区切りのついた曲は書き出して手元に置いておくと、あとでソフトを乗り換えるときに作り直しが要りません。印刷やPDFでの書き出しは見るための形なので、編集し直せる形での控えは別に要ると考えておくほうが安全です。
窓にする基準と、対応サービスの並びから見えること
毎日開くサイトを全部Dockに出すと、タブの山がアイコンの山に置き換わるだけです。基準は3つに絞れます。週に何度も開くか。自分のログインがあるか。開いている間、ほかの作業と混ぜたくないか。
譜面を作るサービスは3つとも当たります。練習や制作の期間は毎日開き、作った譜面は自分のアカウントの中にあり、書いている間はほかのタブに邪魔されたくない。逆にこの基準で落ちるものもはっきりします。コードを調べるためのコード検索サイト、1曲だけ見る譜面の共有リンク、使い方を調べる解説記事。ログインが無く、読んで閉じるだけのものはタブのままで足ります。
サイトをアプリにする道具の対応サービスの一覧を見ていくと、制作系のサービスが一群として並んでいます。Canva、Figma、Excalidraw、draw.io、CapCut。共通点は3つです。ログインが前提であること、1回の利用が長いこと、そして作っている途中の状態を持っていること。譜面のサービスはこの3条件に当てはまるため、同じ扱いで置いて問題になりません。どんなサイトが用意されているかは対応サービス一覧で確かめられ、判断に迷う点があればよくある質問に目を通してから決めると、作ってから戻す手間が省けます。
よくある質問
コード譜を作るソフトで、完全に無料のものはありますか?
あります。MuseScore StudioはGNU GPLで公開されているオープンソースの楽譜作成ソフトで、Windows版、Mac版、Linux向けのAppImageが配布されています。タブ譜に寄せた選択肢としてはTuxGuitarがあり、こちらはGNU Lesser General Public Licenseで、macOS向けのパッケージも配布されています。ブラウザで動くサービスにも無料の枠があり、保存できる件数や書き出しの形に線が引かれています。
ブラウザで作るものと、Macに入れるものはどちらがよいですか?
共同編集とリンクでの共有が要るならブラウザで動くサービス、印刷の仕上がりと操作の速さを優先するならMacに入れる系統が向きます。両方を1つで満たすものは無いため、先に「人と同時に触るか」を決めるのが早いです。ブラウザで動くものを選んだ場合は、その画面を独立した窓に移しておくと、タブに埋もれる問題だけは消えます。
無料のソフトをMacに入れるとき、気をつけることは何ですか?
配布されているパッケージに正式な署名が付いているかを確かめてください。TuxGuitarの公式サイトには、配布物が署名されていないため、導入時にmacOSの署名の検証を一時的に切る操作が必要だと明記されています。手元のMacの設定を触ることになるので、作業の前に何を変えるのかを理解しておくほうが安全です。
ブラウザのページを独立した窓にすると費用はかかりますか?
Safariの「ファイル」から「Dockに追加」を選ぶ方法は、macOS Sonoma 14以降に含まれている機能なので追加の費用はかかりません。窓ごとにログイン状態を分けたい、Chromeの拡張機能を使いたい、複数のサービスを同じ手で揃えたいという条件が出てきた段階で、専用の道具を検討することになります。まず無料の方法で1つ作り、足りない点を見てから決める順番で困りません。