Chromeのアプリモード|見た目が同じ3つの正体を見分ける

Chromeのアプリモードという言葉は、1つの機能を指していません。タブもアドレスバーも無い窓が開く、という見た目の結果が同じなので、まとめて同じ名前で呼ばれています。ところが中身は3つあって、どれを使ったかによって、Macのどこに何が残るのか、あとから消せるのか、Chromeの更新やプロファイルの整理で生き残るのかが変わります。困るのは作った直後ではなく、半年後に「これは何だったのか」を思い出せなくなったときです。ここでは3つの正体と、いま自分がどれを使っているのかを見分ける方法を整理します。

いま自分がどれなのかは、1分で判別できる

先に判別の方法から書きます。新しいタブで chrome://apps を開いてください。

このページには、ブラウザがインストール済みとして管理しているアプリだけが並びます。デスクトップに置いた起動用のファイルも、コマンドで開いているだけの窓も、ここには出ません。つまり、いま毎日使っている窓の元になったサイトがここに載っているかどうかで、正体が2つに絞れます。

載っている場合は、ブラウザが管理している本物のアプリです。この一覧の上で右クリックすれば、起動用のショートカットを作る、パソコンにログインしたときに自動で開くようにする、といった操作がそろっています。困りごとの解決策は、だいたいこのページの中にあります。

載っていない場合は、起動オプションで開いているか、そもそもアプリではなくブックマークです。この2つの見分けは次の節で扱います。判別を先にやるべき理由は単純で、載っていない相手に対して「アンインストールの項目が出てこない」と悩んでも、最初から存在しないからです。

起動オプションで開く窓は、Macに何も残さない

2つ目の正体が、起動オプションです。--app= に続けてURLを渡すと、タブの帯もアドレスバーも無い窓でそのページが開きます。アプリモードという呼び名の歴史としては、これが一番古いものです。

macOSでは、ここに1つ癖があります。Macのアプリは実行ファイルではなく束なので、引数は起動のときに渡す必要があり、しかもChromeが既に動いていると、普通に起動しただけでは動作中のプロセスに吸収されてオプションが無視されます。新しいプロセスとして起こす指定が要ります。

open -na "Google Chrome" --args --app=https://example.com

この経路の性質は、はっきりしています。何も作りません。chrome://apps に載らず、ホームフォルダのアプリケーションフォルダにも束は置かれず、アンインストールする対象そのものが存在しません。共有の画面で毎朝ダッシュボードを開くような、後片付けの要らない用途にはむしろ向いています。

もう1つ、複数のプロファイルを使っている環境で引っかかる点があります。このオプションはどのアカウントで開くかを決めません。プロファイルを指定しないまま起動すると、そのときブラウザが現在のものとして扱っているプロファイルが使われるため、前日に何を開いていたかで結果が変わります。--profile-directory= を同じ行に足しておくと、毎朝同じ結果になります。

なお --app= はChrome固有のものではなく、同じ土台を使う他のブラウザでも受け付けます。ネット上で見つけた1行がうまく動かない原因が、実は別のブラウザ向けに書かれていてアプリ名だけ直し忘れていた、というのはよくある話です。

キオスクモードは、似ているが別のもの

アプリモードを調べていると、キオスクモードという言葉に行き当たります。こちらは --kiosk という別の起動オプションで、画面全体を占有する形で開きます。展示会の端末や店頭の案内画面のように、利用者に他の操作をさせない前提の使い方を想定したものです。

キーの効き方も違います。アプリモードの窓は普通の窓なので、大きさを変えたり他の窓と並べたりできますが、キオスクモードは画面を占有する前提なので、その自由度がありません。作業用として使うと窮屈に感じるのはこのためです。

普段使いの窓としては扱いにくく、目的が違います。ブラウザの余計な部分を消したいだけなら、必要なのはアプリモードの側です。逆に、社内の掲示用ディスプレイに1つの画面を出しっぱなしにするなら、キオスクモードのほうが目的に合います。両者を混同したまま検索すると、まったく別の用途向けの手順を読むことになります。

アプリモードの窓で、効かなくなる操作と効き続ける拡張機能

見た目の違いはタブの帯とアドレスバーの不在ですが、使い始めてから気づく違いのほうが実務では大きく効きます。

タブを対象にしたキー操作は、対象が無いので働きません。新しいタブを開く、タブを閉じる、タブを行き来する、といった操作はすべて空振りします。アドレスバーへ移動するキーも同じです。URLを直接打ち込んで別のページへ飛ぶ癖がある人は、その動きができなくなります。

リンクをたどったときの挙動も変わります。同じサイトの中を移動している限りは窓の中で完結しますが、外部のサイトへ出る瞬間に、普通のブラウザの窓が前に出てきます。管理画面のように外へ出るリンクが少ないサイトでは気づきませんが、メールやチャットのようにリンクが本文の主役であるサイトでは、押すたびに窓が入れ替わります。最初にアプリ化する対象としてこれらを選ぶかどうかは、実際に数回押してから決めるほうが確実です。

一方で、拡張機能はそのまま効き続けます。窓の見た目が変わっただけで、動かしているのはブラウザ本体だからです。パスワード管理も、内容を書き換える系の拡張も、プロファイルに入っていればアプリモードの窓の中で同じように働きます。いま入っているブラウザをそのまま土台にできるという性質は、単体のアプリには無い利点です。

Mac側から見たときの、3つの扱われ方の差

同じ「タブの無い窓」でも、Macがそれを何だと思っているかは経路によって違います。

インストールしたアプリは、ホームフォルダの中のアプリケーションフォルダに束として置かれます。ディスクの一番上にあるアプリケーションフォルダとは別の場所で、ここに入っているものはダウンロードして入れたソフトではなくブラウザ経由で作られたものだ、という見分けがつきます。束である以上、Spotlightの検索に自分の名前で出てきますし、Command+Tabの並びにも独立した枠を持ちます。

起動オプションで開いた窓は、Macから見ればブラウザそのものです。Command+Tabの並びに新しい枠は増えず、ブラウザの枠の中に窓が1つ増えるだけです。ブラウザ本体をよく使う人ほど、この差ははっきり感じられます。タブの帯が消えても、切り替えの手数は減りません。

ブックマークに至っては、押した瞬間にブラウザへ移るので、Macから見ると何も増えていません。

つまり「タブの海に埋もれるのが嫌だ」という動機で調べている人にとって、意味があるのは1つ目だけです。見た目だけを比べていると、この差に気づかないまま起動オプションを選び、期待した効果が出ないまま終わります。

インストール時に付ける名前も、ここで効いてきます。この名前がそのままSpotlightの見出しになるため、ページの題名を長いまま採用すると、同じ語を含む書類やメールと競合します。短くて他と重ならない名前にしておくと、呼び出しが数打鍵で終わります。

名前とアイコンは、サイト側が提案してくる

長く使ううえで一番効いてくるのが、この点です。インストールしたアプリの名前とアイコンは、サイトが持っています。

ウェブアプリによって画面に表示される名前やアイコンが更新される場合は、Google Chrome から更新に関する通知が届きます。更新の承認、無視、またはアプリのアンインストールを選択できます。 出典: support.google.com

通知が出て選べるようになっているのは、他のアプリに似せるような悪意ある変更を防ぐための仕組みです。同時に、この案内は前提もはっきり示しています。インストールしたアプリの見た目は、入れた人の持ち物ではなく、サイト側からの提案だということです。Finderの情報ウインドウからアイコンを差し替えても、その場では変わりますが、恒久的な取り決めにはなりません。

似た色と形の管理画面を3つ並べたときに、この差が現実の問題になります。Dockが実際に描く大きさでは、同じ系列のサービスのアイコンは見分けがつきません。作るときに名前とアイコンを手元で決められるかどうかは、押し間違いの回数に直結します。何をどこまで指定できるかはできることの項目が具体的です。

消えるときの消え方も、経路ごとに違う

インストールしたアプリは、インストール元のプロファイルに属しています。プロファイルを消すとアプリも消えますが、Dockのアイコンだけは残り、押しても何も起きない状態になります。ブラウザを整理したとき、あるいは端末を人に渡す準備をしたときに起きやすい壊れ方です。

起動オプションで作った起動用のファイルは、コマンドを手で直したときの記号の閉じ忘れや、サイト側のURL変更で動かなくなります。管理する一覧がどこにも無いので、原因を探すには元のコマンドを保存した場所を思い出すところから始まります。

そして3つ目、Chrome 128以降に「ショートカットを作成」で作ったものは、そもそもアプリではありません。新しいタブでページを開くブックマークです。壊れているのではなく、その項目がいま行う動作がそれだ、という話です。

ページをアプリとしてインストール 起動オプション ショートカットを作成
出来上がるもの アプリの束 窓だけ、保存物なし ブックマーク
開き方 専用の窓 専用の窓 新しいタブ
chrome://apps に出る 出る 出ない 出ない
アンインストール できる 対象が無い ブックマークを削除
プロファイルに紐づく する 起動時に指定 する
名前とアイコン サイトが提案 ブラウザのもの サイトのもの

どれを選ぶかは、開く回数で決める

3つの経路にはそれぞれ向いた場面があります。試しに1回開くだけなら起動オプション、たまに戻る程度ならブックマーク、毎日開くならインストールかブラウザを土台にした束、という分け方が実際的です。

判断の材料になるのは機能の多さではなく、そのサイトを1日に何回開くかです。対応サービス一覧に並んでいる顔ぶれを見ると、メール、チャット、設計、管理画面といった、開いている時間が長く、他のタブと並べて見比べる意味が薄いものが中心になっています。逆に、月に数回しか開かないサイトを独立させても、Dockのアイコンが1つ増えるだけで終わります。

迷ったときは、いま開いているタブを1週間そのままにして、何回そのタブを探したかを数えるのが早い方法です。探した回数が多いものだけが、独立させる価値のあるサイトです。回数の少ないものを一緒に独立させると、Dockが増えた分だけ探しにくくなり、元の問題が形を変えて戻ってきます。

もう1点、公式のMac用アプリが用意されているサービスかどうかも効いてきます。用意されているなら、まずそちらを試すのが早い。用意される見込みが無いもの、たとえば社内の勤怠システムや請求の管理画面こそ、独立させたときの効き目が大きくなります。作る手順の全体像は使い方ガイドに、費用の考え方は料金にまとまっています。

よくある質問

「ウィンドウとして開く」のチェック欄はどこへ行きましたか?

設定画面へ移動したのではなく、項目そのものが分かれました。窓として開く動作は「ページをアプリとしてインストール」に移り、「ショートカットを作成」はChrome 128以降、新しいタブでページを開くブックマークを作る動作に変わっています。古い手順書を読むと欄が見つからないのはこのためです。

起動オプションで開いた窓は、あとから消せますか?

消す対象がありません。この経路はMacに何も保存しないため、chrome://apps にも載らず、アンインストールの項目も出ません。窓を閉じれば終わりで、次に開きたいときはコマンドをもう一度実行します。残しておきたいなら、インストールする経路か、束として作る経路を選ぶことになります。

アプリモードの窓でも拡張機能は効きますか?

効きます。見た目が変わっているだけで、動かしているのはブラウザ本体であり、プロファイルに入っている拡張機能はそのまま働きます。単体のアプリには拡張機能という仕組み自体が無いので、この点はブラウザを土台にする方式に固有の利点です。

Dockのアイコンを押しても何も起きなくなったのはなぜですか?

インストールしたアプリはインストール元のプロファイルに属しているため、そのプロファイルを消すとアプリの実体が無くなり、Dockのアイコンだけが残ります。直すには、本来の持ち主にしたいプロファイルから同じページをもう一度インストールします。毎日使うものをプロファイルに依存しない形で持ちたい、という要望はここから出てきます。

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