Coherence XのMacでの使い方|借り物のエンジンで動く仕組み

Coherence XのMacでの使い方を調べる人の多くは、URLを入れてアイコンを選ぶだけの手順ではなく、その先で詰まっています。作ったアプリでGoogleのログインが弾かれる、Dockのアイコンを押したら見覚えのないブラウザの窓が出る、リンクを踏んだらアプリの中で全然関係ないページが開いた。これらはどれも操作の間違いではなく、この道具の設計から素直に出てくる挙動です。仕組みを先に押さえると、設定のどこを触ればよいかが一度で分かります。

この道具がMacで作っているもの

最初に押さえる事実は1つです。この道具はブラウザのエンジンを自分で持っていません。画面を描いているのは、そのMacに前から入っているChromium系のブラウザのほうです。公式に対応エンジンとして挙げられているのはChrome、Brave、Edge、そしてChromium(ungoogled版を含む)で、作られたアプリはそれぞれ独立したエンジンの実体を持ちます。動作条件はmacOS 13.5以降で、Apple SiliconとIntelの両方に対応します。現行はCoherence X5で、macOS 26に合わせて作り直されたと案内されています。

エンジンを借りる設計には、良い側面と代償の両方があります。

良い側面は再現性です。表示は元のブラウザとまったく同じになります。Chromeでしか検証していない給与明細の画面や社内の管理画面でも、中身がChromeなのだから同じように動きます。Chromeウェブストアの拡張機能をアプリ単位で入れられるのも、この設計の副産物です。

代償は依存です。土台にしたブラウザを消したり別の場所へ動かしたりすると、そのアプリは行き場を失います。ブラウザが更新されるたびにアプリを手で作り直す必要があった点は長く指摘されていましたが、X5では作成済みアプリの自動更新が追加され、その手間はなくなりました。導入を検討する段階では、この「更新のときに何が起きるか」を機能の一覧より先に見ておくと判断が速くなります。

作るときに決めることは4つある

作成の画面で聞かれるのは4つです。どれも既定のまま進めるより、少し考えたほうが後が楽になります。

1つ目はアドレスです。あとから変えるのがいちばん面倒なので、サービスの入口ではなく、毎朝実際に開く画面を指定します。問い合わせの管理画面なら未対応の一覧、メールなら受信箱です。起動のたびに2回のクリックが消えます。

2つ目はエンジンです。普段使っているブラウザを土台にすると、ログインの状態も表示も予想どおりになります。逆に、普段とは別のブラウザを土台にすれば、そのアプリの身元を日常の閲覧から切り離せます。

3つ目はモードで、4つ目がアイコンです。アイコンは仕様の一覧の上では小さな項目に見えますが、Dockを一目見て目的のものを見分けるという目的そのものに直結します。同じサービスから作った2つのアプリが同じ画像のままでは、個人用と仕事用を並べた意味がなくなります。

作ったアプリは一覧の画面で管理でき、名前、アイコン、タブ、アドレスはあとから編集できます。2台以上のライセンスでは、作ったアプリを他の利用者へ書き出して渡せます。同じ管理画面を数人で使うチームでは、この書き出しの経路が個々の機能より効きます。

作るときに決める3つのモード

アプリを作るときにモードを選びます。ここで決めた内容が、次に開いたときの状態を決めます。

  • 標準(Standard): 起動するたびに指定したURLに戻る。Command+Tで新しいタブは開けるが、次の起動では元のURLに戻る
  • タブ(Tabbed): 前回の状態を復元する。タブを1つ閉じて別のタブを開いた状態で終了すれば、次回もその状態で開く
  • シークレット(Incognito): 何も残さない私的なセッションで動く

使い分けの目安ははっきりしています。ダッシュボード、チャット、問い合わせの一覧のように「開いたら常に同じ画面から始めたい」ものは標準です。調べ物や資料の束のように、開いているタブそのものが作業の状態になっているものはタブです。残したくない2つ目のアカウントや、痕跡を残したくない取引先の環境はシークレットです。

モードはアプリごとに決まるので、1台のMacに3種類が同居しても問題ありません。実際には標準が大半を占め、タブが1つか2つ混ざる構成に落ち着く人が多くなります。

アプリに入る拡張機能が肩代わりしていること

Chromiumの窓をMacのアプリらしく見せている処理は、作成時に自動で組み込まれる拡張機能が受け持ちます。設定はアプリの「Window」メニューの「Extensions」から開きます。

Coherence apps are based on third-party browsers, so the Coherence extension enables additional functionality that would not otherwise be possible. The extension is lightweight, offline, and private. 出典: help.bzgapps.com

土台が他社のブラウザである以上、窓の外側のふるまいに正規の手順で手を入れられる口はここしかありません。宣伝文句ではなく、設計上の制約の説明として読むのが正確です。使い始めた日に関わってくるのは次の3点です。

  • 踏んだリンクをどこで開くか。指定した条件から外れたアドレスは既定のブラウザへ渡される
  • Dockのアイコンを押したときに、どの画面へ戻ってくるか
  • Googleの認証を通すための、ログインの間だけの申告の切り替え

初日に見ておくのは2つで足ります。作ったアプリでログインが最後まで通るか。外へ出るリンクを1回踏んで、行き先が思ったとおりか。この2つが合っていれば、細かい調整は必要になった時点で足せば済みます。逆に、どちらかが期待と違う状態のまま日常の作業に乗せると、原因を自分の設定ではなくサービス側に探しに行くことになり、切り分けに何日もかかります。

環境設定の「Automatically include Coherence extension」の選択を外せば、この拡張機能は新しく作るアプリに入らなくなります。外した窓に残るのは、サイトを正しく表示する機能だけです。

費用の形と、更新の扱い

料金はアプリの数ではなく、Macの台数で決まります。

ライセンス 価格 有効化できるMac
1台 39.99ドル 1台
2台 59.99ドル 2台
5台 99.99ドル 5台

どの区分でも作れるアプリの数に上限はなく、不具合の修正、細かな更新、サポートが含まれます。2台以上の区分では、作ったアプリを他の利用者へ書き出して渡せます。購入前に14日間の試用ができます。

読み落としやすいのは更新の条件です。X5のライセンスは5.x系のすべての公開分に有効です。次の大きな版は改めて購入する形で、既存の利用者には割引があり、4.x系の利用者にはX5への移行が最大25パーセント引きで案内されています。買い切りではありますが、大きな版が変わるたびに費用が発生する形だと理解しておくと、あとで齟齬が出ません。

無料の経路との違い

SafariのDockに追加 Chromeでアプリとしてインストール Coherence X
必要なもの macOS Sonoma 14以降 現行のChrome macOS 13.5以降とChromium系ブラウザ
エンジン システムのWebKit Chromium 土台にしたブラウザ
ログイン ブラウザと分離 プロファイルと共有 アプリごとに独立
同じサービスの2アカウント 使える プロファイルに従うため不可 使える
アイコンの変更 設定から可能 サイト側のものが使われる 可能
外部リンク アプリ内で開く アプリ内で開く 規則に従い既定のブラウザへ
費用 無料 無料 39.99ドルから

3つのうちどれが優れているかという表ではなく、同じ問いへの3つの答えとして読むのが妥当です。窓とログインを分けたいだけのサイトが2つか3つなら、すでに入っている経路で足ります。リンクの振り分け、アプリ単位の拡張機能、アイコンの差し替え、複数台での同じ構成の再現、これらが同時に必要になったところから有料の道具の出番です。

包むべきサイトを絞る3つの問い

この種の道具でいちばん多い失敗は、作りすぎです。Dockにアイコンが20個並べば、タブが30枚あったときと同じ問題が、検索できない形で再現します。次の3つを通ったものだけを残すと、たいてい適正な数に収まります。

  • 平日は例外なく毎日開くか。週に1回では足りません
  • ブラウザを経由せずに届く必要があるか。見逃したくない通知、再起動しても残っていてほしい窓、他の窓に埋もれているときにDockから一発で開きたい場面
  • ブラウザとは別の身元が必要か。同じサービスの2アカウント、個人のログインと混ぜたくない取引先の環境、公開ページの隣に置きたくない管理画面

3つとも通るサイトは、多くの人で3個から6個に収まります。

作る前に、公式アプリの側も1分だけ見る

3つを通ったサイトにも、作る直前にもう1つ当てておきたい確認があります。そのサービスにMac用の公式アプリがあるか、あるとして手元のMacで動くか。ここを飛ばすと、公式アプリのほうが快適なサービスを、わざわざ手作りの窓で使うことになります。

いちばん素直に効果が出るのは、公式のMac用アプリがそもそも存在しない側です。X(旧Twitter)のApp Storeの掲載を見ると、互換性の欄にはiPhone、iPad、iPod touch、Apple Vision、Apple TVが並んでいる一方で、Macの項目そのものがありません。Notionのメモとタスクのアプリも、掲載されているのはiPhone、iPad、Apple Visionだけです。Googleの生成AIのアプリも同じで、iPhoneとiPadしかありません。この種のサービスでMacの画面を独立させたければ、選べるのはブラウザのタブか、包んだ窓かの二択になります。

逆に、期待しないほうがよい動機もあります。「公式アプリが古いMacを切り捨てたので、代わりに包む」という発想です。この道具自体がmacOS 13.5以降を必要とするため、包む側の条件のほうが厳しくなる場面が出てきます。macOS 12で止まっているMacでは、そもそもこの道具が起動しません。古い機械を延命させたいなら、確かめる順番は公式アプリの条件より先に、道具側の動作条件です。

App Storeで名前を検索する場面にも落とし穴が1つあります。検索に出てきたものが、その会社が出しているMac用のアプリとは限りません。同じような名前で別の開発元のアプリが並ぶこともあれば、iPhone用の掲載だけが見つかることもあります。掲載ページの互換性の欄にMacの項目があるかどうかを見るのが、いちばん短い確認です。

一覧ページから読み取れること

道具を比べるとき、機能の箇条書きより先に見ると判断が速くなる情報があります。1つは、雛形として用意されているサービスの数と偏りです。対応サービス一覧のようなページには300以上のプリセットからすぐ作れることが掲げられており、その並びを眺めると、その道具が想定している使い方が見えます。自分が包みたいサービスが載っていれば、アイコンも起点のアドレスも決まった状態から始められます。

設定項目の細かさはできることで、実際にどれだけ手を動かすのかは使い方ガイドで見当が付きます。費用の形、つまり買い切りか継続課金か、大きな版が変わったときにどうなるかは料金で先に確かめておくと、あとから乗り換える手間が減ります。判断が割れやすい点はよくある質問にまとまっています。

そのうえで見ておきたいのが、乗り換えるときの費用です。1つの一覧から数分で作り直せる構成なら、標準の経路と併用しても損失はほとんど出ません。1つのアプリに20分の設定を積み上げる構成なら、その道具の更新が止まった瞬間に同じ時間をもう一度払うことになります。この分野には開発が止まった道具が何層にも積み重なっているので、最後の更新がいつかということ以上に、離れるのに何分かかるかを先に測っておく価値があります。

よくある質問

Coherence XはChromeが入っていないと使えませんか?

Chrome専用ではありませんが、Chromium系のブラウザは必要です。Chrome、Brave、Edge、Chromium(ungoogled版を含む)が対応エンジンとして挙げられており、作られたアプリはその上で動きます。土台にしたブラウザを削除するとアプリは動かなくなるため、入れたままにしておく必要があります。

買い切りですか、それとも毎年払いますか?

Macの台数ごとの買い切りで、1台39.99ドルから、作れるアプリの数に上限はありません。ただしライセンスが有効なのは5.x系の範囲で、次の大きな版は改めて購入する形になります。4.x系の利用者にはX5への移行が最大25パーセント引きで案内されています。

同じサービスを2つのアカウントで同時に開けますか?

開けます。アプリごとにログインの情報が独立しているため、同じサービスを指す2つのアプリに別々のアカウントでログインしたまま並べられます。Chromeの「アプリとしてインストール」ではプロファイルのログインを引き継ぐので、この使い方はできません。

作ったアプリの中でリンクを踏むと関係ないページが開いてしまいます。

拡張機能のリンクの振り分け規則が未設定か、狭すぎるのが原因です。アプリのWindowメニューからExtensionsを開き、そのサービスが使うホストを規則に入れてください。規則に合わないアドレスは既定のブラウザへ渡されます。ログインや決済が別のホストにある場合は、そのホストも含めておくと途中で飛ばされません。

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