電子カルテをMacで開く|診療の画面を専用の窓にする

「電子カルテ mac」で検索すると、Mac専用として作られた製品の紹介と、Macでも使えるクラウド型の比較記事が混ざって出てきます。この2つは選び方の道筋がまるで違うので、どちらの話を読んでいるのか意識しないまま読み進めると判断が止まります。実際のところ、開業を控えた医師がまず確かめるべきなのはMac専用アプリの有無ではありません。候補に挙がっている製品の推奨環境にMacが入っているか、そして入っているならどのブラウザで動くのか、この2点です。この記事では公開されている動作環境の記載を読み解き、そのうえで診療中に画面を探さずに済む形までを見ていきます。

Macで電子カルテを使う道は、いま2本ある

1本目は、Macで動くように作られた製品を選ぶ道です。macOS向けに作られた電子カルテは存在し、Mac専用をうたう製品も出ています。この道を選ぶと、OSの選択がそのまま製品の選択になります。候補は絞られますが、迷いも少なくなります。

2本目は、クラウド型を選ぶ道です。クラウド型はサーバー側で動き、手元の端末はブラウザで画面を表示するだけなので、OSの違いが効く場面が限られます。この構成だと対応OSの欄にWindowsとmacOSが並びます。

実際にどちらが主流かは、比較記事の書き方に表れています。

オンライン診療機能が搭載された、クリニック向けの電子カルテです。Windowsとmac、iPadで操作が可能で、医師の診療効率アップを目指した設計になっています。 出典: meetsmore.com

「Windowsとmac、iPadで操作が可能」という並べ方が、いまの実情をよく表しています。Mac専用として設計されたのではなく、ブラウザで動くのでMacでも動く、という順序です。この順序を踏まえると、探すべき情報は「Mac対応の電子カルテ一覧」ではなく、個々の製品が公開している推奨環境のページになります。

推奨環境のページに、Macはどう書かれているか

クラウド型の代表的な製品が公開している動作環境を読むと、記載の細かさに差はあるものの、書かれている項目はおおむね共通しています。

エムスリーデジカルの場合、推奨するパソコンの条件としてOSの欄にWindows 11以上、macOS 11 Big Sur以上、Linux Ubuntu 18.04以上の64bit、iPadOS 18以上、Android OSが並び、そのうえでGoogle Chromeがインストール可能な端末という条件が付いています。CPUはWindowsなら2018年以降に発売されたIntelまたはAMD、macOSならApple Siliconと書かれています。メモリは8GB以上、モニタ解像度は1920×1080ピクセル以上、インターネット環境は常時接続のブロードバンドで回線速度の実測値30Mbps以上です。

CLINICSカルテの推奨環境も同じ形です。Windows、Mac搭載のパソコンと書かれ、ディスプレイ解像度は1920×1080以上、インターネット回線は光回線が推奨されています。推奨環境であれば原則として機種によらず使えるとも書かれており、ここもOSではなく環境で条件が切られています。

この2社の記載を並べると、Macが不利な立場に置かれていないことがはっきりします。条件はOSではなくCPUとメモリ、画面の解像度、回線の速度で決まっています。開業時に端末を選ぶ場面でも、MacかWindowsかという問いより、解像度1920×1080以上の画面を用意できるか、実測で十分な回線速度が出るかのほうが先に来ます。

見落としやすいのは、対応ブラウザの行

推奨環境の中で、Macの利用者にとって最も重要なのはOSの行ではありません。その少し下に書かれている対応ブラウザの行です。

エムスリーデジカルの記載は、対応ブラウザがGoogle Chrome 最新版であり、iPadの場合のみSafari最新版と書かれています。CLINICSカルテも、ブラウザはGoogle Chrome 最新版と書かれ、より安全に使うために最新のブラウザを使うこと、こまめにアップデートすることが併記されています。

つまりMacで使う場合、パソコンの側ではSafariではなくChromeを開く形になります。macOSを買ったときに入っているブラウザとは別のブラウザで、毎日の診療の画面を開くということです。ここが実務上の分かれ目になります。

  • 診療の画面はChromeで開く
  • 調べ物や他の業務も、同じChromeで開く
  • 結果として、診療の画面はChromeのタブの1枚になる

3行目が問題です。診療中に画面へ戻るには、まずChromeを前面に出し、そのうえで開いているタブの中から目当てのものを探すことになります。タブには決まった置き場所がなく、専用のキーボード操作もありません。かかっているのは読み込みの時間ではなく、探す時間です。患者の前でこれをやるのは、待たせる時間として現れます。

診療の画面をタブから出す、という考え方

解決の方向は単純です。診療の画面だけを独立したアプリとして扱い、Dockの決まった位置に置き、他のタブと混ぜないことです。

macOS Sonoma 14以降のSafariには、開いているWebページを独立したアプリとして保存する機能があります。メニューバーの「ファイル」から「Dockに追加」を選ぶ形で、名前を入力して追加を押すと、ホームフォルダのアプリケーションフォルダに保存され、DockやSpotlightから開けるようになります。

Webアプリは、Safariとは別に機能します。閲覧履歴、Cookie、Webサイトデータ、設定情報はSafariと共有されません。 出典: support.apple.com

ただし電子カルテについては、この方法をそのまま当てはめられません。理由はエンジンです。Safariの「Dockに追加」で作られる窓は、ブラウザの飾りを外したSafariであり、中で動いているのはWebKitです。さきほどの推奨環境はGoogle Chrome 最新版と書かれているので、この窓は推奨環境から外れます。

最初の画面が開くので動いているように見える、というのがこの方法の厄介なところです。不具合が出るとしたら、印刷のレイアウト、画像の表示、外部機器との連携、あるいは電子署名にかかわる処理といった、あとから使う機能のほうです。診療の途中でそれに気づく形は避けたいところです。

推奨環境のまま独立させるには、Chromiumの側で作る

したがってMacで電子カルテの画面を独立させるなら、Chromeと同じ系統のエンジンで作る必要があります。方法は2つあります。

1つはChromeの標準機能です。三点メニューの「キャスト、保存、共有」から「ページをアプリとしてインストール」を選ぶと、独立した窓ができます。インストールしたものはchrome://appsで一覧できます。中で動いているのはChromeそのものなので、推奨環境から外れません。

もう1つは、Webアプリ化ツールを使う方法です。Chromeやそれと同系統のブラウザをエンジンとして指定し、サイトごとに独立したアプリを作る道具で、窓ごとに設定を分けられる点が標準機能との違いになります。

2つの違いは、分ける単位にあります。Chromeの標準機能で作った窓は、元のChromeプロファイルのログイン状態を引き継ぎ、そのまま共有し続けます。1つのアカウントで使う分には十分です。窓ごとにログインを分けたい場合は、先にChromeのプロファイルを分けるところから始まります。

作り方 エンジン 推奨環境との整合 ログインの分離 Dockとアプリ切り替え
Chromeのタブ Chromium 整合する プロファイル単位 対象外
Chromeのページをアプリとして追加 Chromium 整合する 元のプロファイルに従う 可能
SafariのDockに追加 WebKit 推奨環境から外れる 窓ごとに分離 可能
Webアプリ化ツール 指定したブラウザ 指定次第で整合する アプリごとに分離 可能

窓を分けたい場面は、クリニックの現場では想像より多く出てきます。診察室の端末と受付の端末で別のログインIDを使う運用、分院を持っていて法人内で複数のカルテを参照する運用、電子カルテとレセプトの画面を同時に開いたまま行き来する運用が、それぞれ該当します。

作る前に確認しておきたい4項目

医療情報システムは、他のWebサービスと同じ感覚で環境を変えられません。窓を作る前に、次の4点を導入先のベンダーに確認しておくと後戻りが減ります。

1つめは、認証の仕組みです。エムスリーデジカルの説明では、各省庁から提示されているガイドラインをもとにTLS 1.2に限定した暗号化通信が行われ、クリニックがあらかじめ証明書を設定した端末で、ユーザーごとに設定するログインIDで認証されなければデータにアクセスできない、と書かれています。端末に設定した証明書を、独立した窓からどう参照するのかは製品ごとに違う可能性があります。ここは自分で試して確かめるより、先に聞くほうが速いです。

2つめは、保守の対象範囲です。推奨環境として書かれているのはブラウザそのものであり、独立した窓という形が対象に入るかは明示されていません。トラブル時の切り分けを考えると、サポートを受けられる構成を先に押さえておく価値があります。

3つめは、台数の扱いです。エムスリーデジカルのよくある質問には、何台使っても利用料金は変わらず、院内に複数台設置して柔軟な運用を組めると書かれています。CLINICSカルテも、使用する端末や発行アカウント数に関わらず初期費用と月額費用がともに一律と記載されています。窓を複数作ることが費用の増加につながらない前提を、契約の側で確認しておくと安心です。

4つめは、通信できないときの手立てです。CLINICSカルテの説明では、インターネットに繋がらない場合は電子カルテを利用できないが、事前に電子カルテのデータをPDF形式で手元の端末に保存しておけば障害時の参照は可能とされています。エムスリーデジカルにも、障害発生時に過去のカルテをPDFで閲覧できる「カルテビューワー」が用意されています。窓の作り方とは別の備えですが、同じ日に決めておきたい項目です。

費用と導入の時間も、あわせて見ておく

環境の話と費用の話は、開業準備では同じ机の上に載ります。公開されている数字を並べると次のようになります。

エムスリーデジカルは初期費用0円、月々11,800円からと記載されています。クラウド型なので診療報酬改定などのシステム更新は自動で行われ、更新費用もかからないと書かれています。診察中の会話を書き起こして要約するAIエージェントは別料金で、オプション料金は月額8,800円からです。申込から利用開始までは2から3か月程度、急ぐ場合は最短1か月程度とされています。外部機器との連携実績は1000施設以上、90以上のサービスや機器と案内されています。

CLINICSカルテは、使用する端末や発行アカウント数に関わらず初期費用と月額費用がともに一律と書かれており、具体的な金額は問い合わせでの案内になります。iPadとApple Pencilで書いた所見やシェーマをそのままカルテに反映できる機能が挙げられているので、Macとの組み合わせを考えている場合はiPadの扱いもあわせて見ておく価値があります。

導入までに2から3か月かかるという時間の目安は、環境づくりの順番にも影響します。端末とブラウザ、そして画面をどう開くかを決めるのは、この待ち時間の中で終わらせておける作業です。

どの画面を窓にするか、3つの材料で決める

窓が作れると分かると、次は何を窓にするかが問題になります。全部やるとDockが混雑し、探す手間が別の場所に戻ってきます。判断の材料は3つで足ります。

ひとつは開く回数です。1日に何度も開くなら、探す時間の合計が無視できなくなります。診療の画面はここに当てはまります。ふたつめは1回の滞在時間です。長く留まる画面は、他のタブと同じ窓にいる理由がありません。みっつめは、別のログインが必要かどうかです。受付と診察室で別のIDを使う運用なら、ここも当てはまります。

3つのうち2つ以上に該当する画面は、窓にして損がありません。電子カルテ、予約と問診の画面、オンライン資格確認の画面は、いずれも該当しやすい部類です。

道具の側を見ると、標準機能で足りる範囲と専用のツールが要る範囲は分かれます。窓が1つで、ログインも1つなら、Chromeの「ページをアプリとしてインストール」で足ります。窓が増えて画面ごとにアイコンと名前を揃えたい、窓ごとにログインを分けたい、という段階になると専用ツールの領分です。どこまで扱えるかはできることに整理されており、実際の作り方は使い方ガイドで手順として追えます。

窓にすると効く画面の実例は、すでに作られている顔ぶれを見るのが早道です。業務用の管理画面、予約や決済の画面、連絡の道具といった分類で並んだ対応サービス一覧を眺めると、院内のブラウザで開いたままにしているものと重なるはずです。300以上のプリセットからすぐ作れるので、URLを調べ直す手間もかかりません。費用の目安は料金にあり、標準機能との使い分けで迷う点はよくある質問に集まっています。

順番としては、先にベンダーへ4項目を確認し、そのうえで診療以外の画面を1つ窓にして試すのが安全です。予約の管理画面あたりが試し台に向いています。そこで1週間、再起動をまたいでログインが残るか、印刷が崩れないか、通知が窓の側で届くかを見てから、診療の画面に進むと戻り道が残ります。

よくある質問

Macで使える電子カルテはありますか?

あります。クラウド型の製品は推奨環境の欄にmacOSが記載されており、エムスリーデジカルはmacOS 11 Big Sur以上、CLINICSカルテはWindows、Mac搭載のパソコンと書かれています。Mac専用として作られた製品も存在するため、道は2本あります。選ぶ際は対応OSの行だけでなく、対応ブラウザの行まで読むと判断を誤りにくくなります。

MacならSafariで使えますか?

推奨されているのはChromeです。エムスリーデジカルの記載は対応ブラウザがGoogle Chrome 最新版で、iPadの場合のみSafari最新版とされています。CLINICSカルテもブラウザはGoogle Chrome 最新版と書かれています。パソコンで使う場合はChromeを用意する前提になります。

電子カルテの画面を独立したアプリにしてもよいのですか?

形としては可能ですが、確認が先です。Safariの「Dockに追加」で作る窓はWebKitで動くため、Google Chrome 最新版という推奨環境から外れます。Chromeの「ページをアプリとしてインストール」やChrome系のエンジンを指定できる道具なら推奨環境と整合しますが、証明書による認証の扱いと保守の対象範囲は製品ごとに違うため、導入先へ先に確認するのが安全です。

院内で複数の端末や窓を使うと費用は増えますか?

公開されている記載では増えません。エムスリーデジカルのよくある質問には、何台使っても利用料金は変わらず、院内に複数台設置して柔軟な運用を組めると書かれています。CLINICSカルテも、使用する端末や発行アカウント数に関わらず初期費用と月額費用がともに一律と記載されています。実際の契約内容は個別の案内で確かめてください。

記事一覧へ戻る