Fluidの選び方|条件を5つの軸で見る手順
Fluidの選び方を調べる段階で、機能の一覧を見比べても決まりません。この種の道具は、できることの数ではなく、前提条件が合うかどうかで向き不向きが決まるためです。この記事では、そもそもアプリにする価値のあるサイトをどう見分けるか、道具を比べるときに見る5つの軸は何か、そして選び間違えたときにいくらかかるのかを順に整理します。
道具を選ぶ前に、対象を絞る
最初に決めるのは道具ではなく、どのタブをアプリにするかです。ここを絞らないまま道具を選ぶと、要らない機能の値段を払うことになります。
アプリにする価値があるかどうかは、3つの質問で判定できます。
- そのサイトを1日に3回以上開いているか
- 開くときに、いつも同じ画面から始めたいか
- ブラウザのタブの列の中で、そのサイトを見失ったことがあるか
3つとも当てはまるものだけが対象です。週に1回しか開かないサイトや、毎回違うページから入るサイトは、Dockのアイコンが1つ増えるだけで、探す手間は減りません。実際に対象になるのは、多くの場合3つから6つの範囲に収まります。この本数が、あとで費用を判断するときの分母になります。
次に、その3つから6つについて、公式のMac用アプリが出ていないかを確認します。出ているなら、包む道具の話はそこで終わります。出ていない場合だけが、道具を選ぶ対象です。
見るべき軸は5つに絞れる
対象が決まったら、道具の側を見ます。比較表の項目は数十個になりますが、結果を左右するのは次の5つです。
軸1は、画面を描いているのが何かです。自前のブラウザ機能を持つもの、Macに入っているWebKitを借りるもの、そのMacに導入済みのChromium系ブラウザを土台にするものの3種類があります。社内の管理画面がChromeでしか検証されていないなら、3つ目が確実です。逆に、土台にしたブラウザを消したり移動したりすると影響が出るのも3つ目です。
軸2は、ログイン状態の分け方です。個人用と仕事用で同じサービスに同時にログインしたいのかどうかで要件が変わります。アプリごとに独立したCookieを持つ設計なら、同じサービスの2つのアカウントを並べて開けます。ブラウザのプロフィールに紐づく設計なら、アカウントの数だけプロフィールを用意することになります。
軸3は、リンクの行き先をどう決めるかです。アプリの中で開いてほしいリンクと、既定のブラウザに渡してほしいリンクを分けられるかどうかです。1つのサービスの中で完結する使い方なら気になりませんが、メールや課題管理のように外部のリンクを大量に踏むものでは、ここが毎日効きます。
軸4は、動作条件です。必要なmacOSの下限と、対応しているCPUの種類の2つを見ます。ここは機能ではなく足切りの条件で、合わなければ他の項目を読む意味がありません。
軸5は、更新と買い方です。買い切りか、月額か、無料か。そして直近の更新がいつかです。買い切りの安さは、作り直しが発生しない限りで成立します。
この5つ以外の項目、たとえばアイコンの作り方、タブを持てるかどうか、ショートカットキーの割り当て、通知の出し方といった要素は、あとから設定で調整できる範囲に収まります。決めたあとで変えられないのは上の5つだけなので、比較の時間はここに配分するのが効率的です。実際に選び直しになった事例の多くは、機能が足りなかったのではなく、軸4の動作条件か軸1の土台のどちらかが変わったことが原因になっています。
Fluidを5つの軸に当てはめる
例として、この5つの軸にFluidを当てはめます。値は公式サイトと配布物から取れるものだけを使います。
まず軸1です。Fluidは自前のブラウザ機能を持たず、Macに入っているWebKitを借りて描画します。本体の更新が2018年で止まっていても、表示に使われる部分はmacOSの更新に合わせて新しくなります。この設計は、公開当時から説明されています。
Fluid lets you create a Real Mac App ( or "Fluid App" ) out of any website or web application, effectively turning your favorite web apps into OS X desktop apps. 出典: fluidapp.com
「OS X」という当時の呼び方がそのまま残っている点も、更新が止まっている時期を示しています。
軸2は、アプリごとに独立したCookieを持つ設計です。同じサービスの2つのアカウントを、2つのアイコンとして並べられます。
軸3には専用の設定欄があります。作られたアプリの環境設定には、セキュリティとホワイトリストという2つのペインがあり、行き先の制限と、許可する住所のパターンをここで決めます。初期状態ではどこへでも移動できる設定になっており、制限をかけたときにだけホワイトリストが効きます。
軸4は、macOS 10.12以降という下限の低さが特徴です。古いMacを使い続けている場合、これより新しいOSを求める道具はそもそも候補から外れます。一方でCPUについては、本体もアプリの雛形もIntel向けの命令だけで作られているため、Apple Silicon搭載のMacでは変換の仕組みを通ることになります。
軸5は、本体が無料で、追加の3機能が5ドルという構成です。直近の更新は2018年10月です。
この5行を並べると、どういう人に向いているかが自然に出てきます。古いMacを使っていて、行き先の制限を細かく決めたい人には合います。最新のMacで長く使いたい人には、軸4と軸5が引っかかります。
同じ配布物から、比較のときに役立つ見方が1つ取れます。Fluidに内蔵されている利用者エージェントの選択肢はSafari 12、iOS Safari 12、Chrome 70、Firefox 62、Internet Explorer 11で、いずれも2018年当時のものです。ここから選ぶと、今のサイトに対して7年前のブラウザとして名乗ることになります。一方で既定の選択肢だけは性質が違い、動作中のシステムから文字列を組み立てる作りになっているため、放っておいても現在の値になります。外の世界の値を設定として固定した機能は古くなり、実行時に読み取る機能は古くなりません。この区別は、どの候補を見るときにも同じように使えます。
まだ売られているかを4点で確かめる
道具を選ぶときに見落とされやすいのが、その製品が今どういう状態にあるかです。価格表だけを見ていると、前提が崩れていることに気づけません。確かめる点は4つです。
- 終了の告知が出ていないか
- 新規の販売が止まっていないか
- 運営している会社や作者が変わっていないか
- 料金の体系が変わっていないか
この4つは、どれも公式サイトで数分あれば確かめられます。Fluidの場合、終了の告知は出ておらず、配布も生きており、署名に記録されている作者はサイトの表記と一致し、料金も5ドルのままです。つまり4点とも動いていません。
一方で、同じ確認を他の製品に当てると結果は変わります。運営元が途中で変わった製品もあれば、買い切りから月額へ移行した製品もあります。値段が同じでも、買い方や提供元が変わっていれば、前提は別のものになっています。候補を3つに絞った段階で、この4点をそれぞれに当ててみると、比較表では見えない差が出ます。
料金の考え方そのものを比べたい場合は、料金に費用の構成が、判断に迷いやすい点についてはよくある質問に整理されています。
選び間違えたときの費用を見積もる
買い切りの値段だけを見ていると、安いほうが得に見えます。実際の費用は、値段に作り直しの手間を足したものです。
見積もりは簡単です。対象のアプリが4本だとして、1本を作り直して設定を入れ直すのに20分かかるなら、1回の乗り換えで80分です。ログインの往復を確かめる時間や、うまくいかない1本を調べる時間を足すと、実際にはこれより長くなります。これを3年に1度やるのか、一度で済ませるのかが、価格差より大きく効いてきます。
作り直しが発生する原因は3つに絞られます。1つ目は動作条件から外れることです。macOSを上げた結果、対応しなくなる場合が該当します。2つ目は土台にしていたものが無くなることです。特定のブラウザを土台にする設計では、そのブラウザを別のものに乗り換えた時点で作り直しになります。3つ目は提供の終了です。
この3つのうち、選ぶ時点で防げるのは1つ目と2つ目です。3つ目は防げませんが、上の4点の確認で兆候は見えます。
1つ目を防ぐには、必要なmacOSの下限と、今後2年でOSを上げる予定があるかどうかを突き合わせます。下限が現行のOSと同じ製品は、古いMacを持っている側からは選べません。逆に下限が極端に低い製品は、長く更新されていない場合があり、その場合はCPUの対応のほうが先に問題になります。どちらの方向にも振れるため、下限の数字だけを見て安心しないことが要点です。
2つ目を防ぐには、その道具が何に依存しているかを一度言葉にします。導入済みのブラウザに依存するのか、システムの機能に依存するのか、何にも依存せず自前で持っているのか。依存先があるなら、その依存先を自分が今後変える可能性があるかを考えます。普段使うブラウザを乗り換える予定がある人にとっては、この一問だけで候補が絞れます。
無料の経路で足りるかを先に判定する
有料の道具を検討する前に、追加費用のかからない経路で足りるかどうかを判定しておくと、無駄がありません。判定の基準は1つです。5つの軸のうち、軸3が要るかどうかです。
Safariからページを登録する方法と、ChromeやEdgeからアプリとして開く方法は、どちらも軸1と軸2と軸4を満たします。費用もかかりません。満たさないのが軸3です。リンクの行き先を細かく決める欄はありません。
つまり、外部のリンクを大量に踏む使い方をしていないなら、無料の経路で判定は終わります。踏むのであれば、そこが有料の道具を選ぶ理由になります。判断に必要な情報はこれだけで、機能表の残りの項目は、この判定が済んだあとで見れば足ります。
外部のリンクを踏む本数は、感覚ではなく数えたほうが正確です。目安は、1日に10本以上そのアプリの中から外部のページへ移動しているかどうかです。メールや課題管理の画面は、この本数を簡単に超えます。一方で、勤怠の入力画面や社内の申請フォームのように、そのサービスの中で完結する使い方では、1日に1本も踏まないことがあります。同じ人が両方の種類を持っているのが普通なので、判定はアプリごとに行います。すべてを1つの道具で揃えなくてよいのは、この判定がアプリ単位だからです。
対象と条件を1枚に並べる
ここまでの内容を、実際に使える形にまとめます。紙でも画面でも構わないので、次の表を作ります。
| 列 | 書く内容 |
|---|---|
| サイト名 | 1日3回以上開いているもの |
| 公式アプリ | 有無 |
| 同時ログイン | 必要なアカウント数 |
| 外部リンク | 1日に踏む本数の目安 |
| 使っているmacOS | バージョン |
行が3つから6つ埋まったら、そこに候補の道具を当てます。公式アプリの列が埋まっている行は、そもそも道具が要りません。外部リンクの列が空に近い行は、無料の経路で終わります。残った行だけが、有料の道具を検討する対象です。
サービスごとに包む前の注意点が異なるため、候補が固まった段階で対応サービス一覧を見ておくと、設定で詰まる箇所を先に把握できます。この表が埋まっていれば、どの製品の案内を読んでも、自分に関係のある行だけを拾えるようになります。
よくある質問
どのサイトをアプリにすればよいのか判断できません。
1日に3回以上開いているか、いつも同じ画面から始めたいか、タブの列の中で見失ったことがあるか。この3つがすべて当てはまるものだけを対象にします。多くの場合、条件を満たすのは3つから6つに収まります。この本数が、有料の道具に払う費用が見合うかどうかの判断材料になります。
無料の経路と有料の道具は、どこで分かれますか?
リンクの行き先を細かく決める必要があるかどうかで分かれます。Safariから登録する方法やChromeやEdgeからアプリとして開く方法は、独立した窓、独立したログイン状態、動作条件の3点を費用なしで満たします。満たさないのは行き先の制御だけです。
Fluidはどういう使い方の人に合いますか?
macOS 10.12以降という下限の低さから、古いMacを使い続けている場合に候補になります。行き先の制限を細かく決めたい場合にも、専用の設定欄があるため合います。一方で、本体の更新が2018年10月で止まっており、Intel向けの命令だけで作られている点は、新しいMacで長く使う前提だと引っかかります。
買い切りと月額のどちらが安く済みますか?
価格だけでは決まりません。作り直しの手間を足して比べます。アプリが4本で1本20分かかるなら1回の乗り換えで80分になり、これが何年に1度発生するかで結論が変わります。作り直しの原因は、動作条件から外れること、土台にしていたブラウザを変えること、提供の終了の3つです。