Fluidの使い方|作る前に決めておく順番

Fluidの使い方を調べている人の多くは、作成画面の操作そのものでは困っていません。URLを入れて、名前を付けて、作成を押す。ここは20秒で終わります。困るのはその4日後です。ログインするたびに既定のブラウザへ弾き出される。2つ目のアカウント用に作ったはずのアプリが、1つ目と同じアカウントで開く。これらはほとんどが道具の欠陥ではなく、決める順番の問題です。作成画面の3つの欄は、最初に決めることではなく、最後に決めることです。

作成画面の3つの欄が、あとから効いてくる

公式ページが説明している手順は短い。サイトのURLを入れ、名前を付け、必要ならアイコンを選び、作成を押す。数秒でアプリケーションとして出来上がります。ここで意識しておく価値があるのは、3つの欄のうちどれが後から直しにくいかです。

URLは、そのアプリのホームURLになります。起動するたびにここへ戻り、後述する閲覧範囲の初期設定もこのURLから作られます。作った直後から挙動がおかしいアプリは、ほぼこの欄の指定がずれています。ログイン後に転送される先ではなく、転送が終わって落ち着く先を指定するのが基本です。

名前は、アプリケーションとしてのファイル名になり、Dockのアイコンの下に出る文字になり、Command+Tabの切り替え画面に出る項目になります。あとからFinderでファイル名だけを変えても、アプリが内部で名乗っている名前までは書き換わりません。Dockの表示とCommand+Tabの表示が食い違う状態は、この操作から生まれます。

アイコンだけは、本当に後回しで構いません。出来上がったアプリをCommand+Iで開き、左上のアイコンに画像を貼り付ければいつでも差し替えられます。URLを詰める前にアイコン素材を探し始めるのは順番が逆で、多くの解説がその順番で書かれています。

なお、ダウンロードは無料で、作れるアプリの数にも上限はありません。追加費用は5ドルのライセンスだけで、増える機能は3つです。配布されているのはバージョン2.1.2、容量6.3MB、動作条件はMac OS 10.12以降と書かれています。

最初に決めるのはURLではなくアカウント

すべての設定より上位にあり、あとから設定画面で直せない唯一の項目がこれです。

この種のアプリは、ログインの状態を1つ抱えます。同じサービスを仕事用と個人用で使い分けているなら、問うべきは「両方を同時に開いたままにする必要があるか」です。必要があるなら、答えは1つのアプリを設定で切り替えることではありません。アプリを2つ作り、それぞれで1回ずつログインし、Dockに並んだときに一目で区別が付く名前を付けることです。

この判断を決めるのは、ログインの情報がどこに保管されるかです。Appleは自社のWebアプリについて、この点をはっきり書いています。

Webアプリは、Safariとは別に機能します。閲覧履歴、Cookie、Webサイトデータ、設定情報はSafariと共有されません。 出典: support.apple.com

一方、Chromeでページをアプリとしてインストールする道は逆の作りで、作成元のプロファイルのCookieをそのまま引き継ぎます。だからこの道では同じサービスの2アカウントを同時に開いたままにはできません。Fluidの公開ページには、この保管のしかたについての記載がありません。書かれていない挙動は、機能ではなく未確認事項として扱うのが安全です。アプリを8個作ってから確かめるのではなく、1個作ってログインし、2個目を作って別のアカウントでログインできるかを先に試す。ここで数分使うと、あとの作り直しが消えます。

既定のブラウザに弾き出される理由は、ほぼ1か所にある

この道具について最も多い相談が、「アプリの中にいたいのに、勝手にSafariへ飛ばされる」というものです。これは不具合ではなく、閲覧範囲の設定が設計どおりに働いた結果です。

設定画面には閲覧範囲を決める欄があり、選べるのは2つです。どのURLへも移動を許す指定と、指定したパターンに一致するURLだけを許す指定です。パターンの表ではアスタリスクが「ここは何でもよい」を意味します。初期値は後者で、作成時に入れたホームURLから自動で作られたパターンが入っています。

弾き出される流れはこうです。ホームURLが https://example.com/app で、ログインの途中で https://accounts.example.net/ を経由する。この経由先はパターンに一致しないので、ログイン画面が既定のブラウザ側で開く。アプリのほうはログアウト状態の画面のまま取り残される。

直し方は機械的です。既定のブラウザに最初に出てきたURLを見ます。それが、この道具が「このサイトの一部ではない」と判断した住所です。そのURLに一致するパターンを表に追加して、もう一度ログインし直す。会社の認証基盤を経由する場合は、追加が1つで済まず2つ必要になることもあります。よく使われるWebサービスについては、あらかじめ用意されたパターンの組が同梱されています。パターンを手で書き始める前に、対象のサイトがその中にあるかを確かめると、この作業自体が不要になります。

誘惑されやすい抜け道が1つあります。「どのURLへも移動を許す」に切り替えると、症状は一瞬で消えます。何も拒否しなくなるからです。同時に、このアプリがブラウザの窓と違う理由も消えます。1つのサイトを1つの窓に閉じ込めるために作ったものを、全サイトを受け入れる設定にすれば、元の散らかった状態に戻るだけです。原因の切り分けのために一時的に許可へ切り替えるのは有効ですが、確認が済んだら戻してパターンを直します。

逆に、外へ出したいリンクをどう扱うか

反対向きの困りごともあります。外に出すべきリンクまでアプリが抱え込んでしまう状態です。チャット系のサイトが典型で、会話の中には外部の記事や資料の住所が次々に流れてきます。アドレスバーもタブも無い窓で外部記事を開くと、戻る手段が乏しく、かえって不便になります。

この道具は2か所で対応しています。リンクを副ボタンでクリックしたときの文脈メニューに、既定のブラウザで開く項目があります。更新履歴を見ると、この項目はバージョン2.0の書き直しでいったん失われ、2.1.1で戻されています。もう1つは、他のアプリへ渡したリンクを背面で開く設定で、こちらは2.0.2で戻されています。会話の途中でブラウザが前面に出てこないので、読むのを後回しにできます。

順番として勧められるのは、閲覧範囲を狭いまま始めて、ログインに本当に必要な経由先だけを足していくやり方です。最初から全許可にして後で狭めようとすると、どの経由先が必要だったのかを知る機会が永久に来ません。結果として全許可のまま運用が固定され、窓がもう1つ増えただけの状態になります。

5ドルのライセンスは、設定ではなく設計を変える

公開されている有料機能は3つだけです。ステータスバーへの常駐、ユーザースクリプトとユーザースタイルの利用、全画面表示です。ここに書かれていない機能は製品にも無いと考えるほうが安全です。

このうち、ステータスバーへの常駐は、設定というより使い方の形そのものを変えます。常駐させたアプリはDockに居座らず、メニューバーから引き下ろして使う形になります。Dockのアイコンを目で探して押す毎日と、メニューバーから引き下ろす毎日は、別の習慣です。アプリを6個作ってから形を変えると、直すのはアプリではなく習慣のほうになります。だから、この選択は1個目を作る前に決めておく価値があります。

ユーザースクリプトとユーザースタイルは、この一覧の中で唯一、他へ持ち出せないものです。URLも名前もアイコンも、別の道具で数分あれば作り直せます。社内の管理画面から不要な3つの区画を隠すスタイルシートは、書くのに手間がかかったうえ、この入れ物向けに書かれています。これに頼る前提で運用を組むなら、乗り換え先が同じ仕組みを持つかどうかを先に確かめてからにします。

決めること 決める場所 あとから変える手間
どのアカウントで入るか 作成前。アプリを何個作るかの判断 大きい。別アプリを作り直してログインし直す
ホームURL 作成画面の1つ目の欄 中くらい。URLは直せるが閲覧範囲のパターンは作り直し
アプリの名前 作成画面の2つ目の欄 中くらい。Dockの表示と内部の名前が食い違う
アイコン 作成画面の3つ目の欄 小さい。情報ウインドウからいつでも差し替え可能
閲覧範囲のパターン 作成後の設定画面 小さい。自由に編集できる。直しはここでするのが本筋
Dockかメニューバーか ライセンス購入後、アプリごと 中くらい。設定ではなく毎日の習慣が変わる
ユーザースクリプト ライセンス購入後、アプリごと 大きい。他の道具へは持ち出せない

作った直後の1週間で確かめる4つのこと

続く設定と、途中でやめてしまう設定を分けるのは、この4項目です。

1つ目は、ログインの保持です。1回ログインしたらアプリを完全に終了させ、もう一度開きます。ログアウトに戻るなら、ログイン情報を保管していないということで、アカウントの分け方から考え直す必要があります。

2つ目は、知らせが届くかどうかです。更新履歴にはバージョン1.7で通知の仕組みに対応したと書かれていますが、配布されているのは2018年の版で、Web側から出す通知にmacOSが本格的に対応したのはそれよりかなり後です。届く前提で組まず、実際に1回届くのを見るまでは未確認として扱います。知らせが要るサイトなら、ここが道具選びの分かれ目になります。

3つ目は、Command+Tabの並びです。ブラウザとは別の項目として出てくることを確かめます。この分離こそが、わざわざアプリにした理由そのものです。

4つ目は、外へ出るリンクを3つか4つ押してみることです。中で開いてしまうなら閲覧範囲が広すぎ、ログインで弾き出されるなら狭すぎます。症状は正反対ですが、原因はどちらも同じ設定欄にあります。

道具が変わっても、この順番は使い回せる

ここまでの流れは特定の製品に依存していません。アカウントの分け方を決め、転送が終わって落ち着くURLを特定し、中に留めるものを決め、外へ出すものを決め、Dockに置くかメニューバーに置くかを決める。この5つを設定として扱える道具なら、どれを選んでも同じ順番で組めます。

道具によって違うのは、この5つのうちどこまでが最初から埋まっているかです。URLしか聞いてこないものもあれば、主要なサービスについてはログインの経由先もアイコンもリンクの振り分けも用意済みで、閲覧範囲を自分で書く工程がまるごと消えるものもあります。240以上のプリセットからすぐ作れる形の道具なら、対象のサイトが用意済みかどうかを対応サービス一覧で先に確かめられます。5つの判断のうちどれが設定として露出しているかはできることの一覧に出ており、実際の手順の細かさは使い方ガイドを見れば見当が付きます。

乗り換え先を評価するときに見る欄は2つです。買い切りか継続課金か、対応するmacOSの範囲がどこまでかを料金で確かめること。更新が止まった道具は、そのうち期限に変わるからです。もう1つは、判断に迷いやすい点がまとめられているよくある質問で、移行前に読んでおくと1個目の作り直しが減ります。2個目以降は1個目と同じ順番を繰り返すだけになるので、最初の1個にかける時間が全体を決めます。

よくある質問

ログインのたびにSafariへ飛ばされるのはなぜですか?

閲覧範囲の設定が、ホームURLから作られたパターンだけを許しているためです。ログインの途中で経由する認証用の住所がそのパターンに一致せず、外へ出されています。ブラウザ側に最初に現れたURLを見て、それに一致するパターンを設定の表へ追加すれば収まります。追加が2つ必要な場合もあります。

同じサービスの2つのアカウントを同時に開けますか?

入れ物がログイン情報を独立して保管するかどうかで決まります。SafariのWebアプリはSafariとCookieを共有しないとAppleが明記しており、Chromeで作ったアプリは作成元のプロファイルを引き継ぐため2つ同時は成立しません。Fluidの公開ページには記載が無いので、2個作って実際に試してから運用を決めてください。

5ドルのライセンスは作成そのものに必要ですか?

必要ありません。ダウンロードもアプリの作成も無料で、作れる数にも上限はありません。ライセンスで増えるのはステータスバーへの常駐、ユーザースクリプトとユーザースタイル、全画面表示の3つだけです。この3つが要らないなら、無料のままで作成画面の機能は一通り使えます。

古いアプリを別の道具へ移す前に、控えておくものは何ですか?

各アプリが開いているURL、付けた名前、差し替えたアイコン、そして使っているユーザースクリプトとユーザースタイルです。前の3つはどの道具でも数分で作り直せます。最後の1つは入れ物に合わせて書かれているため持ち出せないので、乗り換え先が同じ仕組みを持つかを確かめてから古いほうを消してください。

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