webサイトアプリ化をFirefoxで|削除された機能と残る3つの道

webサイトアプリ化をfirefoxで探して、それらしいメニュー項目が見つからずに設定画面を往復した人は少なくありません。見つからないのは探し方の問題ではなく、デスクトップ版のFirefoxにその機能が用意されていないからです。ここでは、かつて存在した機能がなぜ消えたのか、いま残っている回避策で何ができて何ができないのかを、Macでの判断材料として整理します。

探しても出てこないのは、機能が削除されたため

Firefoxには一時期、サイトを単独の窓として開く仕組みがありました。サイト固有ブラウザと呼ばれる機能で、about:configからbrowser.ssb.enabledという設定を作って有効にすると使えました。ただし正式な機能として公開されたことはなく、隠し設定のまま試験的に置かれていた状態です。

この機能は開発元の判断で取り除かれました。理由は開発元の課題管理システムに記録されています。

The SSB feature has only ever been available through a hidden pref and has multiple known bugs. Additionally user research found little to no perceived user benefit to the feature and so there is no intent to continue development on it at this time. 出典: bugzilla.mozilla.org

要点は3つです。隠し設定でしか使えなかったこと、既知の不具合が複数あったこと、利用者調査で利点が見出せなかったこと。加えて、残しておくと正式な機能だと誤解されるという理由も挙げられています。削除は2021年に公開されたバージョンで完了しており、それ以降のFirefoxでは設定を作り直しても効きません。

スマートフォン向けのAndroid版では、ページをホーム画面へ追加してアプリのように開く仕組みが今も動いています。デスクトップ版だけが対象外という状態のため、「スマホではできたのにMacではできない」という食い違いが起きます。

現状を一言でまとめると、Macのデスクトップ版Firefoxには、サイトをアプリ化する標準の経路がありません。ChromeやSafariのように、メニューから1つ選べば終わる操作を探しても見つからないのはこのためです。

いま残っている3つの道

標準の経路が無い以上、選択肢は回避策になります。実用になるものは3つです。

プロファイルを分けて、別の窓として開く

Firefoxは1つの端末の中に複数のプロファイルを持てます。about:profilesを開くと一覧が表示され、新しいプロファイルの作成と、そのプロファイルを新しいウィンドウで起動する操作ができます。プロファイルごとにCookieもログインも分かれるため、同じサービスの仕事用と個人用を同時に開いたままにできます。

起動の方法は2つあります。1つはabout:profilesの画面から、対象のプロファイルを新しいウィンドウで開く操作です。もう1つはターミナルから-P プロファイル名を付けて起動する方法で、こちらは起動用のスクリプトにしておけば毎回の操作を短くできます。プロファイルの一覧と保存場所も同じ画面から確認できます。

弱点は、窓の見た目が普通のFirefoxのままという点です。タブバーもアドレスバーも残り、Dockのアイコンも1つのFirefoxとして扱われます。Command+Tabの並びで区別することもできません。アカウントを分ける目的は達成できますが、探しやすくする目的には効きません。

なお、アカウントを分けるだけであれば、タブごとにCookieを分ける拡張機能という選択肢もあります。1つの窓の中で仕事用と個人用のタブを併存させる方式で、プロファイルを増やさずに済みます。ただしこちらも窓は1つのままなので、Dockに出したい場合の答えにはなりません。

コマンドラインのキオスクモードで、器だけ変える

Firefoxには全画面でUIを消して起動するキオスクモードがあります。ターミナルから/Applications/Firefox.app/Contents/MacOS/firefox --kiosk https://example.comのように起動すると、タブバーもアドレスバーも無い状態でそのページだけが開きます。

ただしこれはターミナルからの起動です。Dockのアイコンとして扱いたいなら、スクリプトをアプリケーションの形に包む作業が別途必要になります。標準のスクリプトエディタやオートメーション用のアプリで作れますが、アイコンの設定も窓の大きさの記憶も自分で面倒を見ることになります。展示用や受付端末のような固定用途には向いていて、日常の道具としては手間が勝ちます。

もう1つ、キオスクモードは全画面で開く前提の作りだという点にも注意が要ります。ほかのアプリと並べて使いたい場面、たとえばチャットを画面の右半分に置いて作業する使い方とは相性がよくありません。窓の大きさを自由に決めて常駐させたいのであれば、この道は選びにくくなります。

拡張機能と外部プログラムを組み合わせる

有志が公開している拡張機能を入れると、Firefoxでもサイトをアプリとして扱えるようになります。仕組みとしては、拡張機能だけでは足りないため、別途インストールする小さなプログラムと連携して動きます。Firefox本体を専用のプロファイルで起動し直す形で単独の窓を作るため、Gecko系のエンジンのまま使える点が特徴です。

引き換えになるのは、導入と維持の手間です。拡張機能と外部プログラムの両方を入れる必要があり、Firefox本体が大きく更新されたときに追従を待つ場面も出てきます。標準機能ではないため、動かなくなったときに公式の窓口へ相談する経路がありません。

3つの道を並べて比べる

プロファイル分割 キオスクモード 拡張機能と外部プログラム
導入の手間 数分 スクリプトを包む作業が必要 2種類の導入が必要
Dockに単独のアイコン 出ない 包み方しだい 出る
タブバーとアドレスバー 残る 消える 消える
Cookieの分離 プロファイル単位 起動方法しだい アプリ単位
アイコンの差し替え 不可 自分で用意 可能
エンジン Firefox Firefox Firefox
保守 標準機能 自分で維持 有志の更新に依存

3つを並べると、目的によって答えが分かれることが見えてきます。アカウントを分けたいだけならプロファイル分割で足ります。窓を独立させて探しやすくしたいなら、キオスクモードを包むか拡張機能に頼ることになり、どちらも自分で保守する部分が残ります。

表の最後の行が、長く使ううえでは重い項目です。標準の機能であれば、ブラウザが更新されても動き続けることが前提になります。自分で包んだスクリプトや有志の拡張機能は、そこが保証されません。毎日開くサイトのために選ぶ道具が、ある朝いきなり起動しなくなる可能性をどれくらい許容できるかが、実際の選択を決めます。

回避策を試す前に確かめておくこと

どの道を選ぶにしても、先に確かめておくと無駄が減る点が3つあります。

1つ目は、そのサイトが業務でどう呼び出されるかです。メールやチャットに貼られたリンクから開く機会が多いサイトの場合、リンクは既定のブラウザで開きます。専用の窓を用意しても、日に何度も普通のタブで開き直すことになり、窓が二重になります。自分から開くほうが多いのか、リンクから飛ぶほうが多いのかを、1日数えてみると答えが出ます。

2つ目は、アドレスバーが無い状態で困らないかです。ファイルのダウンロード後にURLを確認する作業、複数のページを並べて比較する作業、開発者ツールを使う作業がある場合、窓を絞ると逆に手間が増えます。読むより操作が主のサイトほど向いていて、調べ物が主のサイトほど向いていません。

3つ目は、拡張機能への依存度です。パスワード管理、翻訳、広告の抑制のうち、どれが無いと作業が止まるのかを先に確認しておきます。ここが1つでもあると、選べる道が実質的に絞られます。エンジンを変える道具に移る場合は、そのエンジンで同じ拡張機能が使えるかを確認してから決めることになります。

「Firefoxで」を要件にするかどうかを先に決める

ここが判断の分かれ目です。Firefoxを指定している理由が、エンジンそのものにあるのか、それとも今使っているブラウザがFirefoxだからなのか。この2つは要件としてまったく違います。

エンジンが理由なら、選択肢は上の3つに限られます。追跡防止の挙動、対応している拡張機能、レンダリングの細かい違いは、Firefoxを使っている限りでしか手に入りません。特定のサイトがFirefoxでしか正しく動かない、という事情がある場合も同じです。

一方、単に普段使いがFirefoxというだけなら、要件は「アプリのように開けること」であって「Firefoxであること」ではありません。この場合、そのサイトだけを別のエンジンで開く選択肢が生まれます。macOSに最初から入っているブラウザにはDockへ追加する機能があり、別のブラウザにはページをアプリとしてインストールする機能があります。専用の道具を使う道もあります。

普段の閲覧はFirefox、毎日開く数個のサイトだけは別の器、という分け方は珍しくありません。ブックマークや履歴を移す必要もなく、切り替えの対象は数個のサイトに限られます。ここを混ぜて考えると、いつまでも回避策の比較から抜け出せなくなります。

どのサイトなら、手間をかける価値があるか

回避策はどれも手間が伴うため、対象を絞る作業が先に来ます。基準は2つです。

1つは開き方です。決まった時間に自分から開くサイトは向いています。勤怠、案件の一覧、チャット、社内の管理画面がこれにあたります。検索やリンクから入って読み終えたら閉じるサイトは、タブのままで困りません。

もう1つは、失ったときの痛みです。タブを整理した拍子に閉じてしまい、探し直してログインし直すことになるサイトは、窓を持たせる価値があります。すぐ開き直せるものは対象外で構いません。

この2つを当てはめると、たいていの人で残るのは3個から5個です。その数なら、どの回避策を選んでも維持できます。全部のタブをアプリにしようとすると、探す場所がタブからDockへ移るだけで、量の問題は残ります。

対応表と費用から、次の一手を決める

エンジンの指定を外してよいと判断したなら、専用の道具が候補に入ります。比べる前に見ておくと判断が速くなる情報が3つあります。

1つ目は、想定されている使い方の幅です。この種の道具には300以上のプリセットからすぐ作れるものがあり、その並びを見れば、どういうサービスを毎日開く人に向けて作られているのかが分かります。自分が使っているサービスが含まれているかは対応サービス一覧で先に確認できます。

2つ目は、設定として何を持っているかです。セッションの分離、アイコンの差し替え、通知の扱い、窓の大きさの記憶といった項目のうち、どこまで用意されているのかはできることに整理されています。実際に手を動かす量は使い方ガイドを見れば見当が付きます。

3つ目は費用の形です。買い切りか継続課金か、対応するmacOSのバージョンはどこまでかを料金で確かめておくと、あとから乗り換える手間が減ります。判断に迷いやすい点はよくある質問にまとまっています。

普段の閲覧をFirefoxのまま続けながら、毎日開く数個のサイトだけを独立した窓に出す。この形が現実的な落としどころで、まずは1つ、いちばん長く開いているサイトで試してみると効き目が判断できます。

よくある質問

Firefoxでサイトをアプリにする機能は、設定のどこにありますか?

デスクトップ版のFirefoxには用意されていません。かつてbrowser.ssb.enabledという隠し設定で試験的に提供されていましたが、既知の不具合と利用者調査の結果を理由に削除されました。現在は設定を作り直しても機能しないため、プロファイル分割やキオスクモード、有志の拡張機能といった回避策を使うことになります。

Android版ではできるのに、なぜMacではできないのですか?

対応の方針が端末ごとに分かれているためです。Android版ではページをホーム画面に追加して単独で開く仕組みが動いていますが、デスクトップ版については開発を続けない判断が示されています。同じFirefoxという名前でも、この機能に関しては別物として扱う必要があります。

プロファイルを分ければアプリ化したことになりますか?

アカウントを分ける目的なら達成できますが、探しやすくする目的には届きません。プロファイルを分けてもタブバーとアドレスバーは残り、Dockのアイコンも1つのFirefoxとして扱われます。Command+Tabの並びで区別することもできないため、窓を独立させたい場合は別の手段が要ります。

Firefoxの拡張機能を、アプリ化した窓の中でも使えますか?

有志の拡張機能を使う方法であれば、Firefox本体が動いているため拡張機能もそのまま使えます。一方、別のエンジンを使う専用の道具に切り替えると、Firefox用の拡張機能は対象外になります。特定の拡張機能に業務が依存している場合は、その点を先に確認してから選ぶことをおすすめします。

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